海の声が聴こえる

昨夜、リーズナブルな気仙沼のホテルに一泊。今朝、かつて鉄道が敷かれていた路線を走るBRT(バス)で大船渡に向かいました。大船渡地区と高田地区の高校生2年生の就職ガイダンスの講師の仕事です。あの時の、あの東日本大震災の爪痕がまだ生々しく残る地域の高校。数年前に校長として赴任した宮城のすぐ近くの岩手海岸部の。

講師の今回の目的は、高校2年生に働くことの楽しさ、その意味ある形でのインセンティブを与えることでした。来年の今頃、「わたしは高校時代に〇〇を頑張った」と胸を張って言えるように。震災を話題にすることは一切ないのですが、わたしの中では、宮城で過ごした日々に知った被災生徒の苦しみを思い起こさずにはいられませんでした。その気持ちが、ほんのわずかな戸惑いを生み出していました。

しかし、昨夜のテレビニュースのある特集がそんなモヤモヤを吹き消してくれました。みなさん、ご存知でしょうか。「日本理化学工業」という会社を。チョークのシェア日本一の川崎の会社で「日本で一番大切にしたい会社」だそうです。そこに働く7割は知的障がい者のみなさん。定年まで働きます。仕事は精密で直径11.2mmのチョークの誤差は±0.5mm。とてつもない集中力と熟練した技術の成せる業です。勿論、彼らの経済的自立もできています。そして何より彼らの姿には働く喜びが満ち溢れているというのです。確かに、映像には意図的な編集ではない彼らのありのままの笑顔と相互の信頼、感謝の気持ちが溢れていました。社長は語ります。「そこで実現されているのは働く幸せ。彼らには人の役に立つ喜び、人に必要とされる喜び、働けることの喜びがある。率直にそれらの喜びを受け入れる素直さがあるのです」(小松成美「虹色のチョーク」幻冬舎 2017)

そして、今日、高校生ガイダンス本番。その会社の話はしなかったのですが、お金をいただいて、仕事を通してスキルも人間的な心も成長させてもらえることって素敵で楽しいことだね、と素直に伝えることができました。わたしも長く福祉教育担当教員として知的障がい者の人たちと関わりを持っていましたが、彼ら、そして経営されていらっしゃる方の生き方を見て、あらためて自分を見つめなおすことが出来たような気がしています。ガイダンスの最後に、号令係の生徒に教材として使用したチョコレートをプレゼント。そのうれしそうな顔が忘れられません。

最後の生徒たちのアンケートにはその気持ちが伝わっていたかのような素敵な感想が宝石のようにちりばめられていました。

f:id:careersg:20170731191729j:plain(日本理化学工業HPより)

 

株式会社キャリア・ストラテジー

講師 松本 利勝

 

わたしたち株式会社キャリア・ストラテジーのスタッフは、それぞれの専門領域をいかしたプロフェッショナルなチームです。皆様の人生がより輝くことができるようなお手伝いをさせていただきたいと思っています。お問合せもどうぞ遠慮なく。詳しくは弊社HPをご覧くださいますようよろしくお願いいたします。

 

ファスティングと風の身体

f:id:careersg:20170718095601j:plain(軽井沢の千ヶ滝)

知人のお誘いで、昨日までの二泊三日、軽井沢の森の中で「ファスティング」を体験してまいりました。ファスティングとは、断食を通して心と身体をリセットすること、またデドックスと適度な運動を通して身体の本来持っている生命力を回復すること、また自己理解の深化の手段とも言えるものでしょうか。精神医学的観点からは断食療法ともつながるかもしれません。いずれにせよ、すぐれた指導者の下に行われるものですが、今回はすばらしい指導者を得て、得難い体験を与えられました。

参加した28歳の青年は、体重が4.5キロ減とのこと。わたしは3キロ減でしたから、結果として痩せたいと願う方の健康的な方法とも言えるでしょう。とにかく、口にするものは特別な酵素ジュースを一日4回とお水、頭痛がするときや、何となくお腹が空いたな、と感じた頃に舐める良質のお塩のみ。プログラムは参加自由の朝晩の緑風豊かな散策。一度に5キロ程度歩くことも。ただ、森林浴のようなウォーキングですから苦になりません。今回はビルゲイツの山荘を見学したり、ISAK(小林りんさんが設立した今、世界的に注目されているインターナショナルスクール。真の多様性の中で世界のリーダーを育成することを目的に創立されている。)の森の中の校舎や立教女学院のキャンプ場礼拝堂の見学などのコースでしたので、まったく飽きることがありません。また、たまたま参加された方がそれぞれの専門や楽しい趣味をお話しくださる時間も組まれ、教養講座的要素も散りばめられ楽しさは倍増、疲労感もないのでした。

参加者の目的、学びも様々でしょうが、わたしにとっては自分の身体との新鮮な出会いの体験となりました。わたしたちは自分の身体のすべてを知っているわけではないのだ、という実感。断食すれば空腹感はどうなるのだろうか。基本的に水分だけで身体は動くのだろうか。脳の働きは鈍くならないのだろうか。欲求不満のフラストーレーションにさいなまれないのだろうか等、いろいろ懸念していましたが、まったくそのようなことはないのです。一時、頭痛はするのですが、お塩を舐めると不思議と痛みは緩和され、やがて消えていきます。そして何故か空腹感、飢餓感はありません。夜もよく眠れます。

坂の高低差のある、結構きつい千ヶ滝の道程も歩けてしまう筋肉の元気さです。普通ですと、一食抜いても元気がなくなるように思いますが、最後まで気力充実。驚くべき感覚です。

それはわたしたちが知っている自分とは、自分が認識している一部でしかないということの再確認の体験でした。ジョハリの窓(キャリア教育の中でよく用いられる自己理解の理論。自分には自分が知らない領域があることの説明に使われます)の自己認識の実践的体感とも言えるかもしれません。また、ヨガをされている方からヨガの基本の一部を教えていただきましたが、呼吸法の大事さも実感いたしました。深呼吸することで身体が活性化するような感覚です。軽井沢のみずみずしい緑の森の中でする深呼吸は、身体の細胞が目覚めるような心地でした。オリエントの神話にも神が風のような呼吸を肉体に吹き込むことで、生きる者となるという物語がありますが、そうかもしれません。呼吸が止まるとき、わたしたちは生きる者ではなくなるのですから。ちなみに、呼吸、息はギリシャ語でプネウマと言いますが、風と言う意味もあります。わたしたちの中の風、すなわち呼吸をしっかりすることは古代人の知恵だったのかもしれません。

ファスティングの世界は自己理解を豊かにする。わたしの気づきでした。

自己理解はキャリア、就職、転職を考える際の第一段階です。良い経験でした。

 

株式会社キャリア・ストラテジー講師

国家資格キャリアコンサルタント

産業カウンセラー

元中高校長

 長い教育経験を生かしたカウンセリング、コンサルディングを専門にしています。

皆さんのお役に立てることができればうれしく思います。いつでも、お声掛けください。

 

 

 

 

ブルーナの絵本へ~子育て中のパパ、ママさんへ~

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ブルーナが語るミッフィーのすべて」MOE特別編集 白泉社ムック 2017.6

 絵本は誰でも子供時代に親から読み聞かせしてもらった記憶があるのではないでしょうか。そして、自分自身が親になったときに子供に絵本を読んであげるのです。わたしもそうでした。「怪獣たちのいるところ」はわたしの最も得意とするところでした。絵本を通して親子の絆も深まったような気がします。さらにわたしの場合はわたし自身の人生を見る目を絵本に広げてもらったように思います。絵本の世界は、作者の世界ですから、絵本の数だけ、つまりその数だけ、絵本作家の世界観、視点、価値観と出会うことができた、というわけです。

 わたしが、最も気に入った絵本はオランダの絵本作家ブルーナの絵本です。色彩の魔術師、画家マチスに影響されていたのでしょうか、究極のシンプルな色彩と形、線でその作品は仕上げられています。そして、テーマは大人の鑑賞にも耐える奥深さがあります。その象徴的作品は「うさこちゃんのだいすきなおばあちゃん」。主人公ミッフィーのおばあちゃんの死がテーマですが、ここでは命とは何か、という人間の根源的な問いが与えられています。ブルーナは読み聞かせの対象が乳幼児だか

らといって、人生の本質的な課題をはずした絵本作りはしないのです。

 

人は生まれ、祝福され、生きて、そして与えられた命を全うします。命は、虚無に消えゆくのではなく永遠性を獲得して完成します。ブルーナのメッセージです。わたしは、ブルーナ絵本の豊かさに圧倒されました。今でも、時折絵本を手に取り、その世界から自分の世界観を見直す視点を得ています。わたしの成長の大切な糧となっているのです。

子育て中のママさん、パパさん。可能なら、育休もしっかりとって、子育てを楽しんでください。そして素敵な絵本と出会いませんか?きっとお子さんと一緒に成長できるはずです。

 

株式会社キャリア・ストラテジー

講師 松本 利勝

国家資格キャリアコンサルタント

産業カウンセラー

元中高校長としての経験も活かしながら、皆さんのお役に立てるような働きができることを願っています。

 

60代からのハローワーク

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(書店に並ぶ就活関係の本)

 

7月。すでに就活戦線は半ばとも、終盤とも、これからとも言える時期ですね。学生の皆さんは、内定をいただいて安堵している人もいるでしょうし、今まさに歯を食いしばって自分を激励叱咤してチャレンジし続けている人もいると思います。最後まで、あきらめずに、とエールを送り続けたいと思います。

 

わたしも、2015年3月に校長の任を終え、また新しい仕事を見つけるために4月から就活をはじめた経験があります。目標は2016年度4月からの就業でした。まず、失業手当をいただくためにハローワークに通いました。同時に、ハローワークの相談員に毎月、就活の相談をいたしました。60代のおっさんを採用する職場があるか。塾の講師、児童館のアルバイトなどはありましたが、それが合っているのか、人生を輝かせることが出来るのか、不安が渦巻いていました。このまま、隠居爺さんになろうかとも。

悩みました。学校でしか働いたことがない60代になった自分に果たして雇用されうる能力があるのか。採用する企業はあるのだろうか。・・。ぼぉっと考えても何もはじまりません。そこで、まずは自己分析を始めました。キャリアコンサルタントの知人にアドバイスを求めながら、自分の現状をしっかり認識して、就職するにあたって、欠けているものは何か、それを補う方法は何かなどを考えたのです。

今までの教員としての30年以上の経験を総括してみました。喜びを感じたとき、辛かったときはどんな状況であったか等、森の中で黙想しつつ考えてみました。(奥多摩の森と清流、森を吹き抜ける爽やかな風は、わたしの良きアドバイザーでした。森の野鳥たちも。特に囀るミソサザエは。)

そして得た結論。誰かの役に立ちたい。それも「教育」に詳しい相談員として。こうして国家資格キャリアコンサルタントになったのです。2016年4月から、偶然にも某中学校で臨時の特別枠の教員として採用され、今は講師として就業をしていますが、この資格を持つことでスクールカウンセラー養護教諭との連携もよりスムーズになっていると思います。互いにカウンセリングのプロとして協働できるからです。

ところで、最近の書店探検をしていますと、就活関係の書が目につきます。単なるノウハウものもあれば研究書的なものなどいろいろですが、中には興味深い情報満載の書と出会うこともあります。ただ、それを読めば就活に成功するかといえば、そうではありません。確かに、現代社会で、企業はどのような人事採用をするのか、といった最新情報は面白いのですが(例えば、ESを出すのにある程度、高額な費用が必要とされる企業がある。コストをかけてでも応募する者を採用したい、と。あるいは、面接会場を応募者に設定させる企業がある、という採用方法に関する話題。)それを知ったからと言って、応募者であるわたしたちが採用されうる能力(エンプロイアビリティ)が向上し、採用に至る、とはならないように思います。むしろ、情報に振り回されるリスクがあります。

60代からの就活で大切なこと、それは60代だからと言ってあきらめないこと。それをいろいろなキャリコン仲間から学びました。確かに公立校では定年で隠居する歳ではあるのですが、まだ誰かの役に立てると気づかされました。

50代の方、まだまだです。60代の方、まだまだいけます。一緒に、人生を切り開いていきませんか。

 

松本 利勝

株式会社キャリア・ストラテジー 講師

国家資格キャリアコンサルタント

産業カウンセラー

元中高校長

ロックの人間理解から~先生になりたい高校生へ~

f:id:careersg:20170701112931j:plain「野の花」水彩 マツモト

トシカツ

 

 

ONE OK ROCK  作詞作曲 Taka。そこにはこんな詩があります。

Look how far we've made it. The pain I can't escape it.

このままじゃまだ終わらせることは出来ないでしょ。なんどくたばりそうでも朽ち果てようとも終わりはないさ

 

この詩は恋歌のようにも取れますし、人間一般の不条理の世界にあっても悩みながら生き抜こうとする人々へのエールのようにも思え、素敵です。この詩は愛しき人への切ない想いと同時に人生の矛盾、合理的には到底理解不可能な現実を直視し、それでも生きようとする魂の叫びも重ね合わせるクールさがあるように感じます。このような深い意味を持つ音楽が一定数、若い人々に支持されていることに希望を感じます。

ところで今回のテーマは、将来学校の先生になりたいと夢見る高校生のみなさんに伝えたいことです。 みなさんはもう感じていることでしょう。学校は決して、楽な職場ではありません。朝7時半には職員室にはいり、クラブ活動の指導、後片付けをし、教材研究、授業準備、報告書作成、テスト作成採点、進路指導、その他数えきれない校務分掌、教員会、保護者対応、不登校児童・生徒への対応、研修会参加、中体連、高体連等の土日の引率、審判など、その仕事は無数です。学校を出るのは8時頃になるのは当たり前の日々です。それでも先生たちは、生徒の喜ぶ顔が見たくて頑張ります。

ただ、そのような厳しい労働環境の中だからこそ、心を病む先生たちも。2007年度統計では教員数104万人の14%、125人が自殺。2014年度は18.8%、146人に増えています。自殺に至らなくても精神的に追い詰められている人々はその倍以上でしょう。先生たちのそのように病む原因の第一はうつ。その要因は家族のこともありますし、生徒のこともありますし、多様です。第二は仕事疲れ。とにかく忙しすぎで休めない。心も体も疲弊しきっているのです。第三は先生方の人間関係。先生たちの多くは大学、大学院を卒業してからそのまま教員になります。ビジネスマナーを学ぶ研修も本当に効果的なストレス対応研修もほとんどありません。先輩の先生たちも皆同じです。教科を教えるプロではあっても、社会一般からみれば、きわめて狭い世界、ある意味、閉鎖的社会に生きています。公立であれば転勤という環境変化で回復する場合もありますが、私立ですと、いつも同じ先生方と顔を合わせるのですから、環境変化もはなかなか難しいのです。学年主任、学年の先生の会、生活指導などの委員会、教頭、校長、組合関係の役員の先生との付き合い方など、学校という職場での人間関係改善のためのストレスマネージメント(ストレスをしっかり自己管理すること)をするのは至難の業。先生たちのこの現実はまさに不条理に満ちた世界です。

先生になりたい高校生のみなさん。現場ではこのように厳しい現実もあるのです。とは言え、教育の世界は素晴らしいですよ。是非、チャレンジしてくださいね。ただ、私たちの生きているこの世界、その世界の中にある学校も納得のいかない出来事が山ほどあるのだ、ということを知っていてください。

今朝もテレビではイラクのISの拠点であるモスルがもうすぐ有志連合国が奪還するであろう、それでもテロはなくならないだろう、という報道がなされていました。テロの原因は複雑でしょうが、その根本はわたしたちの世界は、互いを認められない、認めてはいけない、という思想が厳然とあること。例えば難民・移民を受け入れたヨーロッパ諸国の中では、それらの人々の雇用(仕事)が少ないこと、あっても低賃金であることなどはテロを起こしたくなる不満の大きな要素でしょう。貧しさの中で自分の存在価値を認められず、雇用もされず、希望をどのように持つのか、という問題です。世界全体から見れば、人類に平等も絶対的な正義観念の確立もありません。身近な学校の世界も、暮らしの日常生活でも、その不条理は同じです。先生になるということは、このようなわたしたち人間のやるせない、どうしようもない、こぶしを握り締めて泣き叫びたくなるような憤怒に満ちたこの世界をしっかりと受け止めるということでもあります。ごめんなさい。こんなことを高校生のみなさんにお話しして、先生になる夢を壊してしまうかもしれませんね。

見てください。それでも、先生たちは君たちと一緒に学校で頑張っているでしょう。それがなぜできるか、こんな絶望的な世界でも、少しでも、世界を良くしたいからです。君たちと一緒に。案外、ロックな世界です。

株式会社キャリア・ストラテジー 講師

松本 利勝

国家資格キャリアコンサルタント

産業カウンセラー

元中高校長

【お願い】

わたしたちが立ち上げた「キャリア・ストラテジー」の願いはみなさんのかけがえのないひとりひとりの人生の歩みと共に歩むことです。あらゆる分野のスペシャリストが集結してチームとなって支援いたします。このブログもそのような願いをお伝えしたくて書いています。

HPもご覧くださいますとうれしく思います。知人̪、友人にもシェアしていただけますとさらにありがたく思います。宜しくお願いいたします。

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あまり聞かない就活の道

f:id:careersg:20170628171712j:plainレオナルド・ダ・ヴィンチ

                1483 天使の習作 トリノ王立

                美術館

 

今、東京駅近くの三菱一号館美術館で興味深い展覧会が開かれている。(~9月24日)ルネサンスの二大天才、レオナルドとミケランジェロのデッサン展である。わたしは目の前にある本物のデッサン一枚一枚、その二人の精緻な筆使いに圧倒されて、我を忘れる程知的興奮に襲われた。このデッサン、今まで書籍でしか見たことがなかったからである。インクの様々な色、ペン先の柔らかさ、紙質の肌触り、感触が感じられ、あたかもふたりが集中してその場でデッサンしているかのように思われた。

学生時代、わたしの研究テーマは西洋美術史だったが、指導教授からよく言われた言葉は、「何より大切なことは本物の作品を一枚でも多く観ることだ。そうすると自然と本物と偽物を識別できるようになる」。その時、その言葉、成る程と思いはしたが、米も買えず、スーパーの捨てるキャベツを主食にしているような貧乏院生で、かつ留学できる程優秀でもなかったわたしには海外の作品を目にするなど、実現不可能な絶望的なアドバイスだった。しかし、それは本当のことであった。わたしは美術史の研究者にはならなかったが、本物と出会うこと、それはあらゆることにおいてあてはまることを学んだ。教員の世界も、本当に素晴らしい尊敬すべき教員と出会うことが大切であるし、会社員でも学ぶに値する本物のビジネスマンと出会うことが大切であると思う。

さて、わたしたちは人生の中で、果たして幾人、「本物の人間」に出会うだろうか。本物の人間?それは人の感性によるだろうが、まさにこの人は凄い、と思わされる人であろう。(わたしが出会った本物の教員とは、日本を代表する学者でありながら、みんなが使う研究室のトイレを率先して清掃する某先生であった。)その出会いによってわたしたちの人生は変わる。ただその出会いは求めなければ得られない。待っていても出会いはない。偶然は主体性から生まれる、偶然をキャリアに生かすことができる、という理論(クランボルツPlanned happenstance)がある。まさにその通りである。自ら、本物の人間に会いに行きたいものである。

求めれば、そこに素晴らしい偶然があり、出会いがある。実は、就活を勝ち抜く本物の力、転職し得る力、老後の生き甲斐も、この出会いから拓かれるのではないだろうか。特に若き時代、少しくらい背伸びをしても構わない。自分から、今まで踏み入れたことのない会社訪問、交流会、勉強会などに参加してみるなど積極的な行動力が大切。わたしも、そのように努力したい。それが、本物の就活、新しい人生を生み出す道なのだと思う。

 

松本 利勝

株式会社 キャリア・ストラテジー講師

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わが心のネアンデルタール人に訣別を

 

 

f:id:careersg:20170626070750j:plain(森の仲間 イラスト 

                              マツモト トシカツ)

 

マンションのエレベーターの壁に鏡があった。そこに映るのは冴えない熟年の男の姿。わたしである。近年の人類の進化の研究をたまたま知ったからだろうか。ふと、考えた。「この鏡に映るわたしは何者だろうか。」哲学の形而上学(観念的な机上の論理)ではなく、人類学上の分類ではわたしは現生人類、ホモ・サピエンスサピエンスである。そしてその体内には1%から4%の確率でネアンデルタール人のDNAがある。わたしはこの事実の意味する中身を考えなければ、と。

ネアンデルタール人は、「模倣」、つまり鋭利な自然石を真似て、ナイフや槍を作った。一方、ホモ・サピエンスは模倣するにとどまらず、創意工夫して暮らしにより便利かつ創造的なナイフなどの道具を工夫する力を持っている。太古の時代、ネアンデルタール人とその生存期が同じ時代もあったが、ホモ・サピエンスは彼らが絶滅した後でも生存し続けている。研究者たちは、ネアンデルタール人の絶滅の理由として模倣のみの文明の脆弱さを指摘し、ホモ・サピエンスのサバイバルの理由をその環境の中で生き抜く創意工夫能力と指摘する。

わたしたちの人生も同様かも知れない。今までの生き方がいかに誇り高き創造的なものであったとしても、これからの人生がそれまでの模倣にとどまり、進化していかなければ、人生の絶滅は時間の問題となる。社長、部長だろうが、司令官だろうが、それが己の生きた証だと自負する者たちの必然的末路となる。ネアンデルタール人のDNAに心が支配されるのである。しかし、もしわたしたちがこれまでの人生の成功体験に固執せず、未だ未知の世界に真摯に身を投じる勇気を持ち得るなら、そこに絶滅の道はない。そこにあるのは年齢、環境を超越した、充足感である。

さて、わたしたちはホモ・サピエンスとして自分らしい人生を生きるとき、人生のどのようなライフデザイン、キャリアチェンジの選択が許されているだろうか。

ちなみに国際自然連合による分類では、わたしたちは「絶滅危惧種・低危惧種」である。

 

松本 利勝

 

 株式会社 キャリア・ストラテジー 講師

 国家資格キャリアコンサルタント

 産業カウンセラー

 元宮城学院中学・高等学校 校長

 

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