問われる学校のダイバーシティ

f:id:careersg:20180918211740j:plain(今、学校ではムスリムの子供たちとどう向き合うかが問われています。)

今、ダイバーシティ(多様性)という言葉が社会に飛び交っています。あらゆる社会の領域、例えば会社の中には外国人労働者が珍しくなくなりましたね。確かにわたしが住んでいる町のコンビニや飲食業のチェーン店では半数以上が、外国人です。名前のカタカナ表記からすると中国、ベトナム、ブラジル、台湾、フィリピンなどでしょうか。統計では2017年現在でほぼ256万人の外国人労働者厚労省に事業者が届け出た外国人労働者は約128万人。

それらの人々を労働力不足の日本の社会で貴重な戦力にしようと政府は法制を整えています。来年4月から外国人単純労働者受け入れが拡大することが決まっていますから、今後ますます外国人労働者が増えるでしょう。

そうするとその家族も日本社会で共生することになります。そして子供たちは日本の学校に通うことになるでしょう。おそらく彼らの経済的理由から公立の学校がその子供たちを受け入れることになることが予測されます。群馬の伊勢崎の公立小学校などの取り組みが一部のメディアで紹介されていました。例えば学校でムスリムの子供たちの集団礼拝をいかに保証するか、また食べ物も宗教的に禁じられているものについてどう配慮できるか、音楽の授業も精神を高揚させるものは禁じられていますから、どう対応するか。美術の時間も偶像禁止の教えから制限があります。現場の先生方が外国人とどのように接するか、教育現場の中で多様性をどのように実現するか、問われています。

ダイバーシテイ。教育のみならず、社会のあらゆる領域でその実現の仕方、わたしたちの意識が問われています。

松本 利勝

国家資格キャリアコンサルタント

産業カウンセラー

元中高校の教頭、校長

教育カウンセラー

放射能と暮らす

f:id:careersg:20180826222037j:plain福島県郡山市郊外の墓地横にある放射能汚染土の山

お盆に故郷、福島の郡山に帰省しました。兄と叔母の初盆のお墓参り。墓地は市郊外にあります。心が凍り付きました。墓地の駐車場がいつのまにか、東日本大震災時の福島原発が拡散した放射能にまみれた汚染土の山に変貌していたからです。

もちろん、業者の方々が丁寧に、環境に配慮しながらされているプロの仕事です。

美しい福島。山並みの見渡す限りの風景が、見えない放射能に汚染されているという現実が胸を突き刺します。放射能は自然を静かに破壊する見えない悪魔のようです。亡き父が愛した山ではそこに山菜やキノコがあっても、口にすることもできません。実は汚染土の撤去は農園や生活圏のごく狭い範囲のみ。汚染除去などできるはずもないのです。見渡す限りの光景に汚染はあるのですから。

それでも、福島の人々はそこで暮らします。汚染され、墓地に汚染土が山積みにされても、ここが愛しき故郷です。

わたしが住んでいる東京はかつて電気という形で福島の原発恩恵を受けていました。胸が痛みます。取り返しのつかない犠牲の上に私たちのライフラインが支えられていたのです。当たり前の日常として。

現在の日本のエネルギー政策は原子力が是とされています。確たる代替エネルギーが現れるまでは耐えなければならないということです。

さて、このような時代にわたしたちは、どのように生きるべきなのでしょうか。

 

[松本利勝 国家資格キャリアコンサルタント 産業カウンセラー 元中高校長〕

ノブオの時代

f:id:careersg:20180726172642j:plain6月に亡くなった兄ノブオが最後に手にした写真

右側が兄。

兄は優しい人でした。高校を卒業し、一時東京の専門学校に在籍したのですが、ほどなく自衛隊に志願し陸上自衛隊員となりました。仙台の通信隊。それが彼の部署でした。この写真の隊列の旗手が兄です。それは兄の一生の誇りでした。

兄は、父の事業失敗で家計が窮地に陥ったとき、自衛隊を除隊し、家に帰ってきたのです。そして地元福島のスーパーに勤務し家計を助けました。部長に昇進し、いつしかリストラの責任者をおしつけられ、仲間を切り捨てることになったのでした。その痛みをこらえ、最後には自分自身をリストラするという過酷な仕事に耐えた壮絶なキャリアです。そのおかげで、わたしは大学院まで進学することができたのです。若き日、その兄の犠牲を知らずに好きな勉強ばかりをしていたことに胸を痛めます。兄の人生、そのキャリアは決して目立つものではありません。しかし、生涯、自衛隊の仲間を思い、会社の仲間を思い、家族を思い続けました。享年67。

今、わたしは兄の思いを受け継ぎたいと思っています。ただ一度きりの人生をどう生きるか。キャリアコンサルタントの使命は、人々の様々な痛み、喜び、苦しみを胸に刻みつつ、共に一歩前に人生の歩みを進めることだと思っています。

 

松本利勝

国家資格キャリアコンサルタント

産業カウンセラー

元中高校長

 

就活、転職の面接バイブルとは?

f:id:careersg:20180713115700j:plain(大学生協などで売られているベストセラー)

お元気でしょうか。熱い日が続きます。過日は、某特別国家公務員の皆さんの講義が終わりましたら、フラ~として、しばしソファーに倒れこみました。気が付けば、講義と面接実習で4時間、水分補給なしでした。熱中症。反省しております。

さて、就活は高校生も大学生も、そして社会人もそれぞれの課題です。高校生は進路指導担当教諭、大学生はキャリアセンタースタッフ(多くは外部のキャリアコンサルタント)の指導で就活を進めます。大学生の場合は、先輩などからアドバイスも受けますが、就活バイブル本と呼ばれる書籍を通して基礎的なことを学びます。写真の「面接の達人」(通称メンタツ)は最もよく読まれているものです。ここには最低限の面接の心構えが紹介されています。著者の指摘するポイントは、ここに書かれている事例をそのまま真似してもだめですよ、ということ。最後は人間力である、ということです。自分がどのような人間であるか、それがその人の決定的な「強み」ということです。ネットにも実に様々な就活支援サイトがあり、就活、転職の心得を掲載していますが、ポイントは同じです。

最大の就活は、基本中の基本「自己理解と仕事理解」をしっかりと行うことです。自分の良いところ、いくつ言えるでしょうか。仕事をするうえで、また生きていくうえで大切にしたい事、それは何でしょう。そしてそれは働くうえでいかに生かせるでしょうか。そもそも仕事をするのは何のためでしょうか。自分に合う業界、職種はどのようなものでしょうか。

これらをしっかりと行うことが就活を成功に導くことです。就活とは、実は自分の人生を見つめ直す素晴らしいプレゼントであるのですね。

では、皆さん、また。水分補給を忘れずに・・・・

 

松本 利勝

国家資格キャリアコンサルタント

産業カウンセラー

元中高校長

 

西野監督から学ぶ50代の豊かな経験値

f:id:careersg:20180630173133j:plain(西野監督)

今年は計測史上初めての6月の梅雨明けとか。未来予測は過去のデーター、経験値のみに頼る判断は危険であるということでしょう。それは就活でも同様です。

わたしは今、ある施設で特別国家公務員の人々ー50代で退職され、新たに民間で働くために準備を始める方々ーの就職準備教育の講師を務めさせていただいています。受講生は皆、30年程度、国民のために懸命に働かれてきた素晴らしい人々です。国際紛争の場、阪神淡路大震災東日本大震災等の災害支援にも命を賭けて果敢に取り組んだ方々。ある人は職務上、その働きを公に出来ない中で重要な任務を担われていらっしゃる方も。そんな彼らですが50代にもなれば、介護もありますし、またお子さんが小学生の方もおられます。ライフブランも容易ではありません。就活に真剣に取り組んでいます。

就活の際のにアピールする50代の強み。それはやはり「今までの経験値」です。今、話題のリーダー、現在行われているFIFAサッカーワールドカップでベスト16に導いた西野監督ー彼の采配は彼のそれまでの経験値から導き出されたものだと思われます。ただし、彼の経験値の要素には、経験値のみに依存しない柔軟な思考法(自分の思考の枠組み<フレーミング>の再構築する力)があるのでしょう。また、「おじさんジャパン」と呼ばれた30代前後の選手を生かす力もある、ということでしょう。若い人にはない知恵があります。

50代の人々の就職活動も彼らの経験値を生かすことは、大切なことでしょう。ただ、民間の企業で働くためには、民間との違いをしっかり認識し、エンプロイアビリティ(雇用されうる能力、雇用され続ける能力)をレベルアップしなければならない現実は受け止めなければなりません。

わたしも、校長職を終え、新たに就活をしましたが、ハローワークでも、ネット情報でも50代後半のわたしの参考になるキャリアコンサルタントからの発信情報を見つけることはありませんでした。一度は、再就職など不可能ではないか、もはや自分は世の中では必要とされない人間なのではないかと落ち込みました。しかし、この経験も含め、実はこの経験値こそ、最大の強みになったのです。50代の就活の辛さ、不安。良く分かります。

50代の皆さん、50代だからこそ、できることがたくさんあります。同じ年齢の西野監督、次の試合の采配期待しています。わたしは結果は問いません。皆さんは?

松本 利勝

 国家資格キャリアコンサルタント

 産業カウンセラー

 元中学校・高等学校校長

それでもお腹は空く

f:id:careersg:20180626110730j:plain(かぼちゃ。「ほうとう」の具材にするとおいしい・・・)

古今東西、哲学者、宗教者たちは人間の生きる意味を問い続けてきました。悟りを唱える者もあれば難解な理屈で説明しようとする人々もいます。

しかし、ひとつ確かなことがあります。それは、人生の意味が分からなくても、お腹が空くということです。もちろん、悩みが深刻になると食欲もなくなりますが、しかし生きていようとする限りは食べることを欲するのです。

くよくよするのはやめて、料理をしましょう。スーパーに出かけて食材を買って。書を捨て、キッチンに立ちましょう。

世界が明日、滅びることになっても、それでも食べて生き抜きましょう。人生の意味の探求はたぶん、それからでも遅くはありません。

なぜ、仕事をするのか。職探しをするのか。食べるため。家族を養うため。

そう、若き日、わたしも哲学理論書を紐解きながら、当時は手が届かなかった美味しそうな洋食屋さんの前でしばし、足が止まっていました。食べることなくして哲学も意味をなしません。

新しいキャリアもまずはいかに食べていけるか。それが大切な視点なのでしょうね。

 

松本 利勝

国家資格キャリアコンサルタント

産業カウンセラー

元校長。30年以上の中学高校での教育経験から不登校生徒、保護者支援に関わっている。

50代からの転職~介護タクシードライバーの巻~

過日、89歳の義母が初めて介護タクシーを利用いたしました。入院先の病院からリハビリ専門病院までの片道40分のドライブ。ドライバーはAさん。この道13年のベテラン。今、私は50代の転職支援をさせていただいていますが、福祉業界を希望する方も少なくないことに気づかされています。そこでキャリアコンサルタントとして少しだけ、お話しを伺いました。

f:id:careersg:20180613160619j:plain(気遣いを絶やさず丁寧な介護をするAさん。Aさんはもともとアパレル業界で働いていましたが、13年前に現在の職種に就かれたとのことです。現在50代後半。)

f:id:careersg:20180613160641j:plain(病院受付まで車いすで介助してくださいました。)

Aさんは起業してひとりでこの仕事をしています。納得のいくホスピタリティのある人様に喜ばれる仕事をしたい。儲けは二の次であると。介護タクシー購入代は約540万円、そして行政の許可をとり、始めたのだそうです。資格は介護福祉初任者研修修了、二種免許。大手の業者で働くこともできるけれども、利益を考えると安全性より効率性を重んじることになりがちであるので、その選択はなかったそうです。営業、つまり顧客を探すのは大変ですが、Aさんと信頼関係を構築できた病院からの紹介があるので助かっていると、教えてくださいました。また奥様と共働きをしてはじめて生活が成り立つ厳しさもあるとのこと。

Aさん、そう語りながら笑顔が素敵でした。

50代からの再就職は楽な道ではありません。しかし、人生は一度きり、自分が楽しく生きて、かつやり甲斐がないと長くは続かないものですし、そうでなければ悔いも残るのでしょう。Aさんのお話しを伺いながらあらためてそう感じました。

 

松本 利勝

国家資格キャリアコンサルタント

産業カウンセラー