あまり聞かない就活の道

f:id:careersg:20170628171712j:plainレオナルド・ダ・ヴィンチ

                1483 天使の習作 トリノ王立

                美術館

 

今、東京駅近くの三菱一号館美術館で興味深い展覧会が開かれている。(~9月24日)ルネサンスの二大天才、レオナルドとミケランジェロのデッサン展である。わたしは目の前にある本物のデッサン一枚一枚、その二人の精緻な筆使いに圧倒されて、我を忘れる程知的興奮に襲われた。このデッサン、今まで書籍でしか見たことがなかったからである。インクの様々な色、ペン先の柔らかさ、紙質の肌触り、感触が感じられ、あたかもふたりが集中してその場でデッサンしているかのように思われた。

学生時代、わたしの研究テーマは西洋美術史だったが、指導教授からよく言われた言葉は、「何より大切なことは本物の作品を一枚でも多く観ることだ。そうすると自然と本物と偽物を識別できるようになる」。その時、その言葉、成る程と思いはしたが、米も買えず、スーパーの捨てるキャベツを主食にしているような貧乏院生で、かつ留学できる程優秀でもなかったわたしには海外の作品を目にするなど、実現不可能な絶望的なアドバイスだった。しかし、それは本当のことであった。わたしは美術史の研究者にはならなかったが、本物と出会うこと、それはあらゆることにおいてあてはまることを学んだ。教員の世界も、本当に素晴らしい尊敬すべき教員と出会うことが大切であるし、会社員でも学ぶに値する本物のビジネスマンと出会うことが大切であると思う。

さて、わたしたちは人生の中で、果たして幾人、「本物の人間」に出会うだろうか。本物の人間?それは人の感性によるだろうが、まさにこの人は凄い、と思わされる人であろう。(わたしが出会った本物の教員とは、日本を代表する学者でありながら、みんなが使う研究室のトイレを率先して清掃する某先生であった。)その出会いによってわたしたちの人生は変わる。ただその出会いは求めなければ得られない。待っていても出会いはない。偶然は主体性から生まれる、偶然をキャリアに生かすことができる、という理論(クランボルツPlanned happenstance)がある。まさにその通りである。自ら、本物の人間に会いに行きたいものである。

求めれば、そこに素晴らしい偶然があり、出会いがある。実は、就活を勝ち抜く本物の力、転職し得る力、老後の生き甲斐も、この出会いから拓かれるのではないだろうか。特に若き時代、少しくらい背伸びをしても構わない。自分から、今まで踏み入れたことのない会社訪問、交流会、勉強会などに参加してみるなど積極的な行動力が大切。わたしも、そのように努力したい。それが、本物の就活、新しい人生を生み出す道なのだと思う。

 

松本 利勝

株式会社 キャリア・ストラテジー講師

国家資格キャリアコンサルタント

産業カウンセラー

元中学校・高等学校校長

 

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