「明るく元気」は正しいのだろうか

四月も半ば、新しい職場、学校も新年度の行事が終わり、やや落ち着きをを取り戻した頃でしょうか。

学生さんや職場の新人さんたちは、慣れない環境で同学年、同僚と上手にコミュニケーションをとれているでしょうか。

わたしたち、キャリアコンサルタントは、就活支援で「笑顔を忘れずに、さぁ口角をあげましょう。コミュニケーション力を高めるには大切なことですよ」とお伝し、その練習もいたします。確かにわたしたちは笑顔の人に悪い印象はもちません。落ち込んでいるとき、笑顔の同僚からさりげなく、言葉をもらうと元気になりますね。会社の営業でも、販売業務でもそれは同じです。

学校でも「明るく元気なことが1番良いことだ」と言われます。しかし、実は、ここに落とし穴があります。

学校で誰かが、仲間外れにされる原因のひとつは、その誰かが、「暗い性格」だと決めつけられることです。例えば読書が好きで仲間と群れず、自立的な生徒が、しばしばその対象になります。真面目に勉強する生徒も、時にその対象になることもありますね。良い子とは明るく元気な子、という価値観です。

人間は本来、感情豊かな存在です。誰でも悩み、暗い表情にもなりますし、また太陽のように輝く笑顔を見せることもあります。光と闇。わたしたちの心にはその両方があり、それが人の自然の姿です。もちろん。経済的利益、生産効率を求める職場の場合は、仕事としてホスピタリティ溢れる笑顔が求められるのは不可避のビジネスマナーとも言えますが、人格を育てる学校、社会は、そうであってはなりません。

明るい笑顔の人生には、その背後に数え切れない暗い悲しみがあります。その事を知らずに、明るさばかりが、求められる世界はとても危険です。 さて、これから、全国で強く導入される道徳なる教科はいかがでしょうか。

新年度、自分の人生を、明るく、時に意味ある豊かな暗さを味わい深く耕せると良いな、と思います。

松本利勝