失うことの豊かさ

君たちはどう生きるか」。吉野源三郎氏のこの古典的とも言うべき著書がベストセラーです。私たちはこの人生をどう生きるべきか、永遠の問いです。

わたしが若き日、神学を学んだ理由もこの答えを見つけたかったからです。就活などより、生きるためにどうしても探求すべき課題だったのです。

誰でも、いつまでも若くはありません。老いて、或いは病を得て命は尽きてしまいます。心理学者ユングは人生の半ばから人は失うことを受け入れる期間に入るのだ、と述べています。確かに、40代頃から体力も知力もそれまでのようにはいきません。

わたしも還暦を越えていますが、失うが故に見える風景があるのだと感じはじめています。体力の衰え、心の弱さを受け止める力があるからこそ見える景色です。それは命の愛しさや輝きです。路傍の石ころひとつ、駆除される外来種のポピー一輪にも存在することの神秘を感じます。受け止めるその力こそ人生の後半の輝きです。

中世時代の修道士聖フランチェスコがこの世界のあらゆる被造物に価値を見出し祝福されていると謳ったのは人生の探求者として自然のことでした。

わたしもかつて修道士になろうかと思ったこともありますが、今はキャリアコンサルタントに。

みなさんと共に人生というキャリアを探求していきたいと思います。

松本利勝

国家資格キャリアコンサルタント

産業カウンセラー

元校長