先生になれない先生たち

世の中には、「センセイ」と呼ばれる人たちがいます。学校教師、政治家、弁護士、華道家、調理師、カウンセラー、など。その言葉は、ときに揶揄され、嫌な思いをすることもありました。

私は初めて神戸で新米教師として教壇に立ったとき、「センセイ」と呼ばれ、この未熟な自分が「先生」と呼ばれることに身の引き締まる思いをいたしました。内心、教員免許を持っているというだけで人を育て導く「先生」の資格はこの自分にはあるのか、と思いました。しかし、誰にも始めの一歩がある、と肝に命じて、数十年。気がつけば校長になっていました。いろいろな経験、正しいと思う挑戦、また失敗も沢山してきました。

さて自分はセンセイから「先生」になれたでしょうか。

その評価は、神のみぞ知るところです。

「資格」取得というものは、単なるきっかけに過ぎません。国家資格キャリア・コンサルタント、キャリアコンサルティング1級・2級技能士も同じです。受験勉強をそつなくこなし、試験に合格すれば、その資格は取得することが出来ます。しかし、その人は、実はその技能資格が実際の現場でも指導者レベルに値して欲しい、そう期待されている、ということに過ぎません。

現場を知らず、資格だけ取得しただけでは、全くその役割は果たせません。大切なことは、資格を取得してから、いかに現場で真摯に経験を重ね、自己研鑽を積むか、です。

歳を重ね、それなりに実績のある人々こそ真摯な学びが難しい傾向があるように思われます。秋に身を垂れる稲穂のように真摯に生きたいものです。「先生」になれるように。

国家資格キャリア・コンサルタント

産業カウンセラー

元中学・高等学校校長

防災士