森川すいめい、というカウンセリング

 森川すいめい。その名を最近まで知りませんでした。1973年生まれの精神科医の先生です。たまたまNHKの「心の時代」の取材に応じていました。彼は20年以上、路上生活者支援に取り組んでいます。心打たれたのは、その支援活動の背後にある彼自身の壮絶な家族との葛藤。父親から母親と自分へのDV。母親からの拒絶体験。「うつ」の発症。決して順調に医師の道を歩んでこられたわけではありません。苦悩して葛藤して、絶望して、その果てにようやくみつけた自分の弱さ。それを受容し、それを強みとする「生き方の軸」の獲得。映像という媒介を通してでも、その壮絶なこれまでの道程が伝わってきました。

 

人は自分の弱さを認めたくもないし、隠していきたいものです。しかし、ある時、それは人生を支えるにはあまりにも薄っぺらであることを自覚します。人は自分自身に噓をついては生きていけないのです。もちろん、誰にも言えない嘘はありますし、それを告白することで誰かを傷つけるのであれば、それは口外することはしない方が良いでしょう。ただ、それを自分自身が直視し認め、そのありのままの自分の醜悪さ、時には正当化したい欲望という弱さをも肯定し受容することが必要です。誰かに告白して許しを得なければなりません。

そのことを森川さんは「I forgive me」と表現しました。彼はそれを旅で出会った人々から学んだと。人が一歩、前に進もうとするとき、そこに「ゆるされている、ゆるしている自分がいる」という強い思いが必要なのでしょう。

 

森川さんは、わたしよりもずいぶん若いのですが、人に向き合う力、その命の痛みを知る深さには学ぶことしきりです。