校長室の愉しみ

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(公園の桜の古木の枝にとまるセミ)

迎賓館の近く、四谷鮫河橋跡に小さな公園があります。乳幼児を乳母車に乗せた若いお母さんたちが談笑しています。高速道路の車の音をかき消すセミたちの賑やかな鳴き声が響き渡る公園の散歩。こんな時は、何故か辛い中華やインドカレーが脳裏をかすめるのです。わたしの部屋には目黒のインド人のお店から仕入れた幾種ものカレースパイス、長野のドライブインで買い求めた唐辛子があります。もう自分で作るしかありません。昔、インドで食したカレーの味を思い出しながら。そういえば、かつて校長室で生徒たちと一緒にカレーを食べたことを思い出します。校長時代、わたしは前日に、キーマカレーを自宅で作り、校長室で密かにご馳走していたのです。生徒たちとはカレーを通して談話していたのです。そうすることで生徒たちの気持ちを知ろうと。懐かしい思い出です。

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(長野産の唐辛子商品各種)

生徒たちは校長室を訪ねるのは初めてと言っていました。確かに、校長室に生徒が来るのは、中体連などで素晴らしい成績をあげたとき、成績優秀者の表彰、いろいろな事情で生徒ひとりで卒業式を挙げるとき、もしくは成績が極端に振るわないとき、あるいは何か生活指導上の注意のときです。それが、単に校長室で気楽にランチ会をするというのは生徒たちにとっては、それだけで楽しかったようです。中1の生徒も高3の生徒も良く校長室に遊びに来てくれました。そしてたわいもない雑談などして教室に戻って行きました。

あれから、3年が過ぎました。あの生徒たちはどうしているだろうか、と思います。今や、カレーの味は当時の校長室の密かな思い出となりました。

人は一緒に食事をとることで、コミュニケーションをとるのですね。とりわけ。わたしは不器用なので、食事のような媒介がないとなかなか辛いのです。

わたしは不器用でも高倉健さんのようにはカッコ良くはないので、安価でおいしい食事ができるお店を探して友人を誘い、笑顔の交流を深めるのがこれからの愉しみのひとつになりそうです。

就活やソーシャルマナーの研修でも笑顔は大切です。研修講師は口角を挙げましょう。表情筋も柔らかくなどと。確かに、その通りです。でも、おいしいものを食べている自分を思い出すのも微笑みを生み出す効果的な方法かも知れません。

 

元校長  松本 利勝