わたし、失敗しないので?

テレビの人気ドラマは、エンタテインメントとして良く練られて、制作されている方々の意気込みを感じます。さすがにプロだな、と感心します。相棒も科捜研も、ドクターXも、確かに面白いのです。

ひと昔前は熱血教師ものが流行りました。あの金八先生も相当な視聴率だったと思います。しかし、あのようにひとりひとりの生徒を愛し、自己犠牲的にプライベートの時間までも生徒のために費やす先生は、今や教育ファンタジーでしかありません。金八先生が放課後、堤防を生徒たちと歓談しながら帰宅するシーンは象徴的です。あの明るい時間帯に帰宅する先生は居ませんから。普通であればクラブ指導、会議、小テスト採点、教材研究、印刷等に追われ、早くても7時は過ぎるはずです。もちろん、泣いたり笑ったり、ドラマチックな場面は現場にはあります。わたしも若い日、神戸の学校から東京の学校に赴任する際の最後のHRで、生徒たちに「俺らを見捨てるんかい!」と泣かれて胸が熱くなったことがありました。しかし、日常はドラマチックなことはありません。互いに信頼し合いましょうね、などという言葉にリアルな説得力はありません。第1、生徒たちはクールです。話せば分かり合える、やれば必ず出来る、人は信じることが大切、ひとりひとりがかけがえのない存在といった、道徳的正しさも時に教室では虚しいファンタジーです。生徒たちは、知っています。最近のアニメやゲームの物語もそのような臭いセリフはギャグになりつつあります。

確かに多くの先生たちは、生徒たちを思い、努力を重ねています。しかし、現場はファンタジーではありません。偽善的、表層的な道徳観念など通用いたしません。先生は、時に失敗もします。失敗しながら、何が生徒のためになるかチャレンジしています。