わが子が学校に行けなくなった・・・

「うちの子が連休明けから・・・学校に行けないんです・・」そのようなご両親の相談が珍しくありません。小学校では約5万3千人、中学校で13万人弱の子どもたちが不登校であると報告されています。

 某政府機関の相談室でも例外ではありません。「実は仕事のことでなく・・・」と。あるお父さん、「学校にはスクールカウンセラーが配置されてはいますが、予約しても1か月後になるし、専属のカウンセラーはいなくて巡回しているだけなのでとても継続的で親身なカウンセリングは期待できないのです」と。確かに、公立小学校にカウンセラーが毎日、詰めていることはそうありません。かつて私が勤務していた私立の学校は、毎日、複数のカウンセラーがいつでも、児童・生徒の相談を受けることができる体制でした。予算も確保していました。それが当たり前だと思っていましたが、日本全体でみれば、公立私立ともにそのような手厚い体制があるのは稀であることがわかります。良くて週に数度、非常勤で採用されているだけでしょうか。またスクールカウンセラーが雇用される場合は「臨床心理士」か「公認心理師」の資格を持つ者が採用されるケースが多いように思われますが、現場ではカウンセラーは担任、保護者、教頭等の現場の先生方と連携しなければ成り立ちません。学校という教育現場の組織の特色、異動などの人事体制、カリキュラム、先生方の勤務体制などにも一定の理解が必要ですがそれが難しいのです。心理職としての専門知識はあっても、そこまでの力量を持つ方は稀でありましょう。心理職としてどのような現場でどのようには働きたいのか、その人の意識が問われるところです。

 かつてわたしは渋谷区の某有名私立中学で不登校生徒のお世話をしていたことがあります。教員としての立場でしたが、建学精神を教える立場、いわゆる心の教育担当者でもありましたから、不登校の生徒をわたしの研究室で預かることにしたのです。隣接するカウンセラー室と保健室との連携作業です。学校には何とか来ることはあるけれど、教室には入れない子二人。はじめは心を閉ざしていましたが、次第にお弁当を一緒に食べるなどして、柔和な顔が戻り、一年後、クラスに戻っていきました。一緒にご飯を食べること、子供が興味を持つことを一緒に作業すること。割りばしで「巨大なノアの箱舟制作」それを文化祭で展示する。それがわたしの対応でした。学校に生徒の居場所を作っていたということです。現場ではカウンセラーの心理学的見識と先生たちの経験、共にその経験を分かち合い協力し合う、ということが必要だということを実感した経験でした。

 コロナ禍ではさらに不登校の生徒が増える可能性があります。私たちにできることは何でしょうか。